前にいた子のおはなし...


はじめに
1.出会い
2.親離れ子離れ
3.うんちゃん?





たびぶらトップへ
ホームへ

由葉が我が家にやってくる1年前まで、我が家には黒いワンコがいました。
本名は明(メイ)、でも、私と夫と友達は「うんちゃん」と呼んでいました。
その子のおはなしです。

妊娠にも気付かず、いま思えばなんてひどい飼い主なんでしょう。。。けれど、野良犬の姿こそ見られなくなったものの、庶民の家の犬と言えば雑種の番犬。ご飯は汁掛けご飯と言うのがまだまだ常識の時代。雌は子供を生むのは、あたりまえの事、、、と考えていたんだと思います。それより何より私の犬じゃないし・・・。

メイの出産から数日、犬が怖かった私も、ヨチヨチと庭先を転げ回る子犬を見ながら「犬も可愛いなぁ」と思えるようになっていました。でも、子犬全部面倒を見るほどの犬好きには、まだまだなれるハズがありません。
「可愛い子犬差し上げます」家の塀に張り紙をする古典的な里親探しを始めると、張り紙を見て何人かの人が子犬を見に訪ねてきてきてくれました。

予想通り元気な雄から順に新しい飼い主さんに引き取られて行きました。そして、一番食が細く他の子犬よりもひとまわり小さかった黒い雌犬が最後に残りました。
パソコンがマイコンと呼ばれやっと家庭に入り始めようとしていた時代、限られたネットワークを頼りにするしかない里親探しは、当然難航しました。

日がたつごとに、子犬独特のかわいさも手伝って、家族それぞれ勝手に「ちびちゃん」「くろちゃん」と呼んでかわいがるようになりました。私も2頭くらいならいいかな?と思い始めたある日、犬が欲しいと言う方が現れました。
さすがにショックでしたが、この子の為にも、その方に引き取って貰った方が良いと思い、見に来て頂くことにしました。

里親希望の方がいらっしゃる朝、努めて平常を装っていつもの通り仕事へ出掛けました。普段通りの仕事、特に変わったことも無く、でも長い長い1日だったと思います。慌てて帰ることもなく普段通り仕事を終え、そして努めて普通に「ただいま」と玄関を入ると、思いがけない事が・・・。黒い子犬が帰宅した私を迎えてくれたのです。
なんだ、気に入られなかったんだ・・・。やっぱり弱々しいし雌だし・・・。でも何かが変なんです。

「めいちゃんは?」義理母に聞くと、「貰われてった」と。「はぁ?」聞き返すと、「貰われてった」同じ言葉でした。「えっ、どういう事???」全く義理母の言うことが理解できませんでした。
落ち着いてもう一度聞き直しました。先方さんがこの子の方が良いと言って、お母さんの方を連れて行ったとのこと。
たとえどんなに子犬が可愛くてもすぐに大人になるのだし、約1年も飼ってきた子を、そんなに簡単に手放せたのか、不思議でしかたがありませんでした。2頭か1頭か究極の選択の結果だったんでしょうね。


こうして、黒い雌の子犬は、正式に「うちの子」になったわけです。
お母さんの名前をそのまま受け継いで、2代目明(メイ)ちゃんとなりました。